『ディスコ探偵水曜日』について語る

 『ディスコ探偵水曜日』とは、舞城王太郎による探偵推理小説である。

 

 

f:id:tomonaritaiga:20190311011413j:image

 

<あらすじ>

迷子専門の米国人探偵ディスコ・ウェンズデイは、東京都調布市で、六歳の山岸梢と暮らしている。ある日、彼の眼前で、梢の体に十七歳の少女が〈侵入〉。人類史上最大の事件の扉が開いた。魂泥棒、悪を体現する黒い鳥の男、円柱状の奇妙な館に集いし名探偵たちの連続死──。「お前が災厄の中心なんだよ」。ジャスト・ファクツ! 真実だけを追い求め、三千世界を駆けめぐれ、ディスコ!!

 

 

 この小説の面白いところは、トンデモ、推理、萌、エロ、グロ、主人公であるディスコの起こす幻覚症状などの多くの要素を兼ねつつ一つの作品として成立しているところだと思う。

 中でも興味を引かれたのはディスコの見る幻覚である。この要素では、日常の中で、守られるべき対象として子供という存在を捉え危険な現場へも命を惜しまず飛び込むディスコと、それと対に存在するもう一つの本心が、幻覚の中で一人の人間として、対決者としてディスコの前に立ちはだかる。

 全体としてライトノベル的、エンタメ的な要素が強い本書の中でこのような要素を取り入れたことは、勢いを殺さずに主人公の内面を深部まで描写することに成功していると思う。

 また推理のシーンも素晴らしい。12人の探偵が互いの推理の弱点を指摘しながら持論を展開して行く中で、館全体が生き物のように一つの意志を持ち絶えず変化して行く。証拠が不可思議な変化を遂げて行く事件の真相を見破ることは不可能だ。ディスコは探偵たちと議論を戦わせながら、屋敷を動かす大元のエネルギーを探る独自の探索を決行する。

 

 

以上、『ディスコ探偵水曜日』の感想でした。内容とはあまり関係ないけどラノベ風の表紙を見て買う層とこの本の内容があっているのか人ごとながら心配になってしまう。

 

AmazonのURL

https://www.amazon.co.jp/ディスコ探偵水曜日%E3%80%88上〉-新潮文庫-舞城-王太郎/dp/4101186340#productDescription_secondary_view_div_1552234368947

 

Twitter:tomonari_1221